統合失調症とは フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から要約

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統合失調症(とうごうしっちょうしょう、de:Schizophrenieen:schizophrenia)とは、妄想や幻覚などの多彩な症状を示す、精神疾患の一つ。医学が進歩した今日でもなお治療が困難な病であり、患者には障害者手帳が交付される。

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概要

脳に器質的な障害が発生することによるかどうかは両論あるが、幻覚や妄想などの症状を呈し従前の生活能力が失われてしまう病である。

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古代ギリシャから似たような病の存在は知られていたが、病因は2008年現在においても不明。病因については、神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰によるという仮説をはじめ、様々な仮説が提唱されている。

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治療では、1950年代にフランスでクロルプロマジンという薬物が一部の患者に効果があることが発見され、これを契機に抗精神病薬による薬物治療が広く行われるようになった。1990年代後半からの非定型抗精神病薬の使用や、効果的な急性期治療、社会復帰のため福祉施設や法制度の整備などにより、患者の入院期間は短縮されているが、薬物療法が部分的にしか効果を示さず病棟内で長期に生活を継続している患者も少数であるが存在することも事実である。

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名称

元々ドイツ語のSchizophrenieに対する訳語として、日本では明治時代に精神分裂病と訳された。

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本来、精神分裂病の「精神(phrenie)」は心理学的意味合いで用いられた単語であり、「知性」や「理性」を現す、一般的な意味での精神とは意味が異なる。ところが、「精神分裂病」という名称が日本では「精神が分裂する病気」→「理性が崩壊する病気」と誤って解釈されてしまうケースが見られた。

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患者・家族団体等から病名に対する偏見が著しく強いという苦情が多かった。そこで、2002年に日本精神神経学会総会によって英語のschizophreniaに対する訳語を「統合失調症」にするという変更がなされた。

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疫学

罹患率・有病率など

生涯発病率は約0.85% 120人に1人)であり、まれな病気ではない。米国では生涯罹患率は約1%[1]で、年間発症率は10万人当たり11[2]とされる。

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性差によって発病率は変わらない。

研究対象となった地域・人種などにより罹患率の差があるが、診断基準にも左右され、その意味は明らかではない[3]

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アイルランドでの地方間における罹患率の差も議論の対象となっている。

社会経済的地位の低い層に罹患率が高いが、これは患者が病気のために社会的に不利な立場にあるためと理解されている。

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発病の危険因子

出生時の産科的合併症[4]や父親の高齢(父の年齢が10歳増すごとに統合失調症になるリスクは有意に1.47倍増加)[5]、冬生まれ[6]、妊娠中の大きなストレス[7]や飢餓[8]、毒素への曝露[9]、薬物乱用[10]、子供のときの家ネコへの曝露[11]やトキソプラズマ症[12]等は有意に統合失調症発症リスクを増加させるものとして知られている。

特に統合失調症患者の薬物乱用者の割合は、最初の入院以前に非患者の2倍に上った。

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薬物乱用をしていた統合失調症患者の乱用薬物のうち、88%は大麻であった[13]

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合併症の疫学

統合失調症の患者は関節リウマチに罹患しにくいことが知られている。

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分類

分類

分類はICD-10による。

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妄想型 (ICD-10 F20.0)

(en:Paranoid schizophrenia) 妄想・幻覚が症状の中心である。解体した言動が乏しい。

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破瓜型 (ICD-10 F20.1)

(en:Disorganized schizophrenia)思春期前半に発症することが多い。解体した思考や行動(まとまりのない思考や行動)が主体である。

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予後は一般的に悪い。

緊張型 (ICD-10 F20.2)

(en:Catatonia schizophrenia)興奮・昏迷などの症状を呈する。

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同じ動作を繰り返す。上記2タイプに比べて稀である。

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鑑別不能型 (ICD-10 F20.3)

(en:Undifferentiated schizophrenia)

[編集] 統合失調症後抑うつ (ICD-10 F20.4)

急性期の後に訪れることが多い自殺などを招くことがあるので注意が必要である。治療法はうつ病にほぼ準じる。

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残遺型 (ICD-10 F20.5)

陰性症状が1年以上持続したもの。陽性症状はないかあっても弱い。

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原因

グルタミン酸仮説:麻酔薬として開発され、のちに精神異常の副作用の為使用が断念されたフェンサイクリジンを投与すると、統合失調症様の陽性症状及び陰性症状がみられたこと、フェンサイクリジンがグルタミン酸受容体(NMDA受容体)の遮断薬であることがのちに判明し、グルタミン酸受容体(NMDA受容体)の異常が統合失調症の発症に関与しているという仮説。実際に欧米を中心に従来の抗精神病薬とグルタミン酸受容体(NMDA受容体)作動薬であるグリシン、D-サイクロセリン、D-セリンを併用投与すると抗精神病薬単独投与より陰性症状や認知機能障害の改善度が高くなることが報告されている。

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将来的に、グルタミン酸受容体に作用する抗精神病薬の開発が期待されている。

発達障害仮説:統合失調症の初発患者において脳の容積が一部低下していたり、死後脳において脳の構造異常が見られたりする例があることから、脳の発達段階での何らかの障害が関与しているとする仮説。

妊娠初期にインフルエンザに罹ると生まれてくる子供が統合失調症になる確率が3倍になるという研究[16]がある。

心因説:かつて、二重拘束説(Double bind theory:親から2つの互いに矛盾するメッセージを受け取った子供が、それをうまく処理することができず、しかしそれに応えようとして発病するという仮説)や、high EE説(Expressed Emotion:否定的なメッセージを送りやすい家庭で育つことと再発率が関係しているとする仮説)などの心因説が、統合失調症の原因として唱えられ、患者の家族が不当に苦しんだ時代があったが、その後の研究でそれらの心因説は否定され、発病後の症状悪化要因ではあっても決して原因ではない、とされる。

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症状

思考、知覚、自我意識、意志・欲望、感情など、多彩な精神機能の障害が見られる。大きく陽性症状と陰性症状の二つがあげられ、その他の症状に分けられる。

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関連語に妄想着想(妄想を思いつくこと)、妄想気分(世界が全体的に不吉であったり悪意に満ちているなどと感じること)、妄想知覚(知覚入力を、自らの妄想に合わせた文脈で認知すること)がある。

被害妄想(他人が自分を害しようとしていると考える。

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「近隣住民が常に自分を見張っている」)

追跡妄想(誰かに追われていると感じる。「ストーカーの集団に追われている」)

心気妄想(重い体の病気にかかっていると思い込む)

誇大妄想(患者の実際の状態よりも、遥かに偉大、金持ちだ等と思い込む)

宗教妄想(自分は神だ、などと思い込む)

嫉妬妄想(配偶者や恋人が不貞を行っている等と思い込む)

被毒妄想(飲食物に毒が入っていると思い込む)

血統妄想(自分は天皇の隠し子だ、などと思い込む)

家族否認妄想(自分の家族は本当の家族ではないと思い込む)

また、上記の妄想に質的に似ているが、程度が軽く患者自身もその非合理性にわずかに気づいているものを??念慮(被害念慮、注察念慮)という。

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知覚の障害と代表的な表出

実在しない知覚情報を体験する症状を、幻覚(hallucination)という。幻覚には以下のものがあるが、統合失調症では幻聴が多くみられる。

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